フリーランス新法の支払期日60日ルール|月末締め翌月末払い・検収日・請求書未提出の扱い
フリーランス新法の報酬支払期日(受領日から60日以内)について、起算日(受領日か検収日か)、支払期日の書き方、月末締め翌月末払いの可否、支払日が金融機関休業日のときの扱い、再委託の30日例外、請求書未提出時の対応まで、発注企業がつまずきやすい実務ポイントを整理します。
文責: Sync Star編集部
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注事業者に対して報酬の支払期日を明確に定めることが求められます。なかでも実務で問い合わせが多いのが「受領日から60日以内」というルールの数え方です。この記事では、起算日の考え方から、再委託時の例外、よくある締め支払いパターンの可否までを整理します。
なお、フリーランス新法が保護するのは、従業員を使用しない個人事業主や、一人の代表者以外に役員がなく従業員も使用しない法人(「特定受託事業者」)への業務委託です。また、支払期日のルール(第4条)の義務を負うのは「特定業務委託事業者」です。特定業務委託事業者とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者のうち、個人の場合は従業員を使用する者、法人の場合は二以上の役員があるか従業員を使用する者を指します(第2条第6項)。つまり、従業員がいなくても役員が2人以上いる法人は該当します。委託先が従業員を雇用している場合など本法が適用されない取引もあるため、まず自社の取引が適用対象かを確認したうえで読み進めてください。
報酬の支払期日は「受領日から起算して60日以内」
フリーランス新法では、発注事業者は給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に支払期日を定めなければなりません。ポイントは3つあります。
- 起算日は「成果物を受領した日」であって、検収が完了した日ではない。
- 「60日以内」かつ「できる限り短い期間」で定める必要がある。
- 支払期日を定めなかった場合は受領した日が、60日を超える期日を定めた場合は受領した日から60日を経過する日が、支払期日とみなされる(60日超の定めをしても、契約が優先されるわけではない)。
つまり「検収に時間がかかったから支払いも遅れてよい」とはならない点に注意が必要です。
また、「60日以内」は上限であって、「60日ぎりぎりに設定してよい」という意味ではありません。とくに継続的な取引で、これまで納品後すぐに支払っていたのに「60日以内でよい」ことだけを理由に支払期日を後ろ倒しにすることは、「できる限り短い期間」で定めたとはいえず、本法上問題となるおそれがあります。
支払期日は「具体的に特定できる日」で定める
支払期日は、いつ支払われるのかが暦のうえで一つに特定できる形で定める必要があります。「翌月10日まで」「受領後○日以内」のように幅のある書き方は、支払う日が一つに定まらないため、支払期日を定めたとは認められないおそれがあります。
- 「毎月末日締め・翌月末日払い」
- 「毎月20日締め・翌月10日払い」
- 「納品月の翌月25日払い」
上のように、締め日と支払日をセットで、日付が特定できる形で定めておくと安全です。「以内」「まで」といった上限だけを示す表現は避け、支払日そのものを明記します。
「受領日」と「検収日」を混同しない
もっとも多い誤解が、検収完了日を起算日にしてしまうケースです。フリーランス新法上の起算日はあくまで物品や成果物、役務の提供を受けた日です。検収の社内フローが長い企業ほど、受領日ベースで期日を再設計する必要があります。
ただし例外があります。給付の内容が業務委託時に明示した内容と異なるなど、フリーランス(特定受託事業者)の責めに帰すべき事由があり、報酬の支払前にやり直しをさせる場合には、やり直し後の物品・情報成果物を受領した日(役務提供委託の場合は役務を提供した日)が起算日となります。この場合は当初の受領日ではなく、やり直し後の受領日から60日以内で数えます。
締め支払い(締切制度)の場合の考え方
多くの企業は「月末締め・翌月末払い」などの締め支払い(締切制度)を採用しています。月初に受領した成果物を暦日で数えると、支払いまで61〜62日目になることがありますが、毎月末日締めのように月単位で運用する締切制度については、公正取引委員会の運用上、「受領日から60日以内」を「受領日から2か月以内」として扱います。31日ある月も30日しかない月も同じ1か月と数えるため、月末締め・翌月末払いは、月初に受領したケースでも適法です。この読み替えは月単位の締切制度を前提としたものであり、締め期間が1か月を超える変則的なサイクル(例: 45日締めなど)には適用されません。
一方で、「2か月以内」を超える設定は認められません。たとえば月末締め・翌々月末払いは約3か月となり、支払期日ルールに違反します。
| 受領日 | 締め・支払サイクル | 支払日 | 受領日からの日数 | 可否 |
|---|---|---|---|---|
| 5月1日 | 月末締め・翌月末払い | 6月30日 | 61日 | 適法(2か月として運用) |
| 5月1日 | 月末締め・翌々月末払い | 7月31日 | 92日 | 違法(2か月超) |
| 5月20日 | 月末締め・翌月末払い | 6月30日 | 42日 | 適法 |
月末締め・翌月末払いであれば問題ありませんが、支払サイクルが2か月を超える設定(翌々月末払いなど)になっていないかは確認しておくと安全です。
支払日が金融機関の休業日に当たる場合
定めた支払日が土日祝日など金融機関の休業日に当たることもあります。この場合でも、当然に翌営業日払いにできるわけではなく、あらかじめ書面または電磁的方法で「休業日のときは翌営業日に順延する」旨を合意しておくことが必要です。
公正取引委員会の運用では、この順延の期間が2日以内で、翌営業日に支払うことをあらかじめ明示・合意している場合には、結果として受領日から60日を超えても本法上問題としないとされています。逆に、事前の合意がないまま支払日を後ろ倒しにすると、支払遅延と扱われるおそれがあります。締め支払いの取引条件を明示する際に、休業日の順延ルールもあわせて記載しておくと安全です。
再委託の場合は「30日以内」の例外がある
発注事業者が、別の発注者から受けた業務をフリーランスに再委託しているケースでは、例外として元委託の支払期日から起算して30日以内という定め方が認められる場合があります。
- 通常の取引条件の明示に加えて、①再委託である旨、②元委託者の名称等、③元委託業務の対価の支払期日を、あらかじめフリーランスに明示していることが条件。
- ③の「元委託業務の対価の支払期日」は、実際に元委託者から支払われた日ではなく、元委託者との間であらかじめ定められた支払期日を指す。
- この明示がない場合は、原則どおり受領日から60日以内が適用される。
再委託の例外を使うかどうかは、明示要件を満たせるかどうかで判断します。
インボイス制度との関係で気をつけること
支払期日そのものはインボイス制度とは別の論点ですが、実務では請求・支払フローで交差します。
- 適格請求書発行事業者かどうかで、消費税の仕入税額控除の扱いが変わる。
- 登録番号の有無によって請求書の表示や金額計算が変わるため、支払処理の前提として整理しておく。
支払期日の管理と請求書の要件チェックは、同じワークフローで扱えると抜け漏れが減ります。
ただし注意したいのは、フリーランスから請求書が提出されていないことは、支払いを遅らせてよい理由にはならない点です。公取委Q&Aでも、請求書提出の有無にかかわらず、受領日から起算して60日以内に定めた支払期日までに報酬を支払う必要があるとされています。インボイス(登録番号)の確認が未了でも、支払期日そのものは動きません。
支払期日を守れなかった場合:勧告・命令などの行政措置
定めた支払期日までに報酬を支払わなかった場合は、フリーランス新法違反として、公正取引委員会等による指導・助言や、勧告・命令・公表の対象となる可能性があります。命令に違反した場合には、罰金が科されることもあります。
なお、フリーランス新法自体には、事業者間の委託取引に適用される取適法(旧下請法)における年14.6%のような法定遅延利息の規定はありません。支払いが遅れた場合の民事上の遅延損害金は、契約や民法の定めに従います。発注側の規模などから同じ取引に取適法も適用される場合には、取適法上の遅延利息(年14.6%)が問題になります。
「資金繰りの都合で少し遅れるだけ」でも法令上は支払遅延に当たるため、支払期日を起点にした入金処理のスケジュール管理と、遅延が起きない締め・支払サイクルの設計が重要です。発注先にフリーランスと企業が混在する場合は、両方の法律を前提に支払フローを設計する必要があります。
実務でのチェックリスト
最後に、発注側が最低限おさえておきたい点をまとめます。
- 支払期日を「毎月末締め・翌月末払い」など、暦のうえで具体的に特定できる形で定めているか(「翌月10日まで」「○日以内」など幅のある書き方になっていないか)。
- 検収日ではなく受領日を起算日にしているか。
- 締め支払いは月単位(毎月末日締めなど)で運用し、「翌月末払い(受領日から2か月以内)」に収まっているか。翌々月末払いなど2か月を超える設定や、45日締めなどの変則的なサイクルになっていないか。
- 支払日が金融機関の休業日に当たる場合の翌営業日への順延(2日以内)を、あらかじめ書面・電磁的方法で合意しているか。
- 再委託の例外を使う場合、明示要件(①再委託である旨②元委託者の名称等③元委託業務の対価の支払期日)を満たしているか。
- 請求書・インボイスが未提出でも、定めた支払期日までに支払う運用になっているか。
よくある質問(FAQ)
月末締め・翌月末払いは違法ですか?
いいえ。毎月末日締めのように月単位で運用する締切制度では、「受領日から60日以内」を「受領日から2か月以内」として運用するため、月初に受領したケースでも月末締め・翌月末払いは適法です。ただし翌々月末払いなど、支払サイクルが2か月を超える設定は認められません(この読み替えは月単位の締切制度が前提で、45日締めなどの変則的なサイクルには適用されません)。
請求書が未提出なら支払いを待ってよいですか?
いいえ。フリーランスから請求書が提出されていないことは、支払いを遅らせてよい理由にはなりません。請求書提出の有無にかかわらず、あらかじめ定めた支払期日までに報酬を支払う必要があります。
検収完了日から60日以内でよいですか?
いいえ。起算日は検収完了日ではなく、成果物や役務の提供を受けた「受領日」です。社内の検収フローが長い場合でも、受領日を基準に支払期日を設計する必要があります。
支払日が土日祝の場合は翌営業日でよいですか?
当然に翌営業日払いにできるわけではありません。あらかじめ書面・電磁的方法で翌営業日に順延する旨を合意しておくことが必要です。順延が2日以内であれば、結果として受領日から60日を超えても問題とされない場合があります。
再委託なら必ず30日ルールになりますか?
いいえ。再委託の30日例外は、①再委託である旨②元委託者の名称等③元委託業務の対価の支払期日をあらかじめ明示していることが条件です。明示要件を満たさない場合は、原則どおり受領日から60日以内が適用されます。
あわせて読みたい
支払期日の考え方は、フリーランス新法 対応ガイドで全体像とあわせて確認できます。事業者間の委託取引に適用される支払ルールは取適法(旧下請法)対応ガイドを、発注書の記載事項は取適法対応の発注書チェックリストをご覧ください。契約・発注・請求・更新をまとめて管理したい場合は、業務委託管理プラットフォームとはもあわせてどうぞ。
参考資料
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取引における法的な判断を保証するものではありません。具体的な対応は必要に応じて専門家にご確認ください。
- フリーランス新法
- 支払期日
- インボイス