取適法における電磁的方法による明示とは|書面交付との違いと実務のポイント
取適法(旧下請法)第4条の「電磁的方法による明示」について、書面交付との違い、旧下請法からの変更点、受託側が受信・確認できる状態で明示することの重要性、書面交付を求められた場合の対応まで発注企業向けに整理します。
文責: Sync Star編集部
2026年1月に施行された取適法(旧下請法を改正した中小受託取引適正化法)では、委託事業者(発注側)は発注時に取引条件を「書面」または「電磁的方法」のいずれかで明示することが義務づけられています。この記事では、電磁的方法による明示の位置づけと書面交付との違い、旧下請法からの変更点、実務で気をつけたい注意点を整理します。
取適法そのものの概要(改正点・適用範囲・発注側の義務)は「取適法(旧下請法)対応ガイド」、発注書に記載すべき事項は「取適法対応の発注書チェックリスト」をあわせてご覧ください。
電磁的方法による明示とは
取適法第4条第1項では、委託事業者が中小受託事業者に製造委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などを発注したときは、直ちに取引条件を明確に記載した書面を交付するか、または電磁的方法により明示することを義務づけています。書面か電磁的方法かは委託事業者側が選択でき、どちらを選んでも記載・明示すべき取引条件の範囲は変わりません。
電磁的方法とは、紙の書面を交付する代わりに、電子メールの送信など、受託側を特定して取引条件を伝達する電子的な手段で明示する方法を指します。発注書を毎回郵送・手渡しする必要がなくなるため、オンラインで発注業務を完結させたい企業にとっては実務上のメリットが大きい選択肢です。
書面交付と電磁的方法の違い
書面交付と電磁的方法は、どちらも取引条件を明示する手段としては同格であり、法律上どちらか一方が原則・例外という関係にはありません。両者の主な違いは明示の形式そのものです。
- 書面交付:発注書などの紙媒体を作成し、受託側に交付する。
- 電磁的方法:電子メールの送信など、受託側を特定した送信を通じて取引条件(明示事項)を提供する電気通信の方法。明示事項の全部をメール本文に記載する必要は必ずしもなく、明示事項の一部をシステム上に掲載し、その明示事項を確認できるURL等と残りの明示事項を受託者宛てに送信する方法も考えられます。いずれの構成でも、受託側が使用する端末の画面上に明示事項が明確に表示される状態にする必要があります。単にクラウドシステム上に発注情報を掲載するだけで、受託者個別への送信を伴わない場合は、電磁的方法による明示があったとは認められないおそれがあります。
いずれの方法でも、給付の内容・代金の額・支払期日など明示すべき事項に違いはありません。記載すべき事項の詳細は「取適法対応の発注書チェックリスト」で解説しています。
旧下請法からの変更点:事前承諾は法律上の要件ではなくなった
改正前の下請法では、電磁的方法により取引条件を提供する場合、あらかじめ下請事業者から承諾を得ることが法律上の要件とされていました。取適法ではこの事前承諾の取得が法律上の要件ではなくなり、委託事業者は書面と同様に、電磁的方法を任意に選択して明示できます。
ただし、事前承諾が不要になったことと、その電磁的方法による明示が有効と認められるかどうかは別の問題です。電磁的方法は、受託側を特定した電子メール等による送信を通じて明示事項が提供され、受託側が使用する端末の画面上に明確に表示される状態になって初めて、明示義務を果たしたものと扱われます。単にクラウドシステム上に発注情報を掲載するだけで受託者への個別の送信を伴わない場合や、送信しても受託側に届いていない場合は、明示義務を果たしたことにならないおそれがあります。受託側がメールやシステムの利用に不慣れであったり、受信環境が整っていなかったりする場合は、円滑な取引のためだけでなく、明示を確実に成立させる観点からも、書面交付を選べるようにしておくなどの配慮が実務上重要です。
電磁的方法を使う際の注意点
書面交付を求められたときの対応
電磁的方法により取引条件を明示した後、中小受託事業者から書面の交付を求められた場合、委託事業者は法令上の例外に該当する場合を除き、遅滞なく書面を交付しなければなりません。電磁的方法を採用しているからといって、書面交付の求めを一律に断ることはできない点に注意してください。
メール・システムいずれを使うか
電子メールでの送信は手軽ですが、発注ごとに記載事項の漏れがないかを人手で確認する必要があります。クラウドシステム上で発注書を作成・発行する方法であれば、必須項目の入力を仕組みで担保しやすく、送付履歴も自動的に残るため、記載漏れや交付漏れのリスクを減らせます。取引先が増えるほど、システムを介した電磁的方法のメリットは大きくなります。
Sync Star 業務委託管理における電磁的方法の取り扱い
「Sync Star 業務委託管理」は、取適法第4条第1項に基づく電磁的方法として、受託側を特定したシステムからの電子メール送信を通じ、システム上で明示事項を確認できる仕組みと組み合わせた取引条件の提供に対応しています。当社が定める電磁的方法による明示の具体的な条件(パートナー=受託側が書面交付を希望する場合の申出方法を含む)は「電磁的方法による明示について」に明示しています。
発注書のオンライン作成・交付にとどまらず、発注に紐づく支払期日の管理や契約・発注・請求情報の一元管理もあわせて行えます。業務委託管理の全体像は「業務委託管理プラットフォームとは」で解説しています。
まとめ
- 取適法第4条第1項は、発注時の取引条件の明示方法として書面と電磁的方法のいずれも認めている。
- 電磁的方法とは、電子メールの送信など、受託側を特定した送信を通じて明示事項を提供する電子的な手段による明示を指す。受託者への個別の送信を伴わず、単にシステム上に掲載するだけでは、電磁的方法による明示と認められないおそれがある。
- 旧下請法と異なり、電磁的方法を用いるための事前承諾は法律上の要件ではない。ただし受託側を特定した送信により、画面上に明確に表示される状態でなければ明示義務を果たしたことにならない。
- 電磁的方法で明示した後に書面交付を求められた場合は、例外に該当しない限り遅滞なく書面を交付する必要がある。
参考資料
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取引における法的な判断を保証するものではありません。記載事項の正確な範囲や適用の有無は、公正取引委員会・中小企業庁の公表資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
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