【2026・2027年施行】労働安全衛生法改正とは?個人事業主・フリーランスへ発注する企業の対応
2025年改正の労働安全衛生法について、個人事業主・フリーランスへ発注する企業向けに解説。納期・作業方法への配慮、混在作業、業務上災害の報告制度、施行時期と実務チェック項目を整理します。
文責: Sync Star編集部
2025年5月、労働安全衛生法と作業環境測定法が改正されました。本記事で扱う主な改正内容は、2025年から2028年にかけて段階的に施行されます。なお、本改正には、SDSの危険有害性情報の通知義務違反に対する罰則など、公布後5年以内の政令で定める日に施行される項目もあります。
今回の改正で特に注目されるのが、労働者と同じ場所で働く個人事業者などを、安全衛生上の保護対象と義務の主体に位置づけたことです。注文者や作業場所を管理する事業者が講じる措置も見直されました。
また、業種を問わず、仕事を他人に請け負わせる者は、作業方法や納期などについて、安全で衛生的な作業を損なうおそれのある条件を付けないよう配慮する必要があります。
本記事では、個人事業主・フリーランスへ業務を委託する企業の視点から、改正のポイントと実務上の確認事項を解説します。
労働安全衛生法改正の概要
改正法は「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」として、2025年5月14日に公布されました。
主な改正分野は、次の5つです。
- 個人事業者等に対する安全衛生対策
- 職場のメンタルヘルス対策
- 化学物質による健康障害の防止
- 機械等による労働災害の防止
- 高年齢労働者の労働災害防止
この記事では、このうち発注実務との関係が特に深い「個人事業者等に対する安全衛生対策」を中心に取り上げます。改正全体は、厚生労働省の改正法特設ページと改正概要で確認できます。
改正内容はいつから施行される?
改正内容は一斉に施行されるのではなく、次のように段階的に施行されます。
| 施行日 | 発注企業に関係する主な内容 |
|---|---|
| 2025年5月14日 | 作業方法・工期・納期などについて、安全衛生を損なう条件を付けないよう求める配慮規定を明確化 |
| 2026年4月1日 | 建設業・造船業・製造業などにおける元方事業者等の措置対象を、個人事業者等を含む作業従事者へ拡大。労働者と同じ場所で作業する者の協力・遵守に関する規定なども施行 |
| 2026年10月1日 | 個人ばく露測定を作業環境測定の一部に位置づける制度などを施行 |
| 2027年1月1日 | 一定の個人事業者等の業務上災害に関する報告制度を施行 |
| 2027年4月1日 | 一定の危険・有害業務等を伴う混在作業について、業種横断の作業場所管理事業者による連絡調整等の制度を施行。一定の個人事業者等には、機械の定期自主検査や危険・有害業務の特別教育受講などを義務化 |
| 2028年4月1日 | 労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックを義務化 |

なお、「個人事業者等」に関する具体的な義務は、すべてのフリーランスやすべての業務委託に一律に適用されるわけではありません。労働者と同一の場所で作業するか、仕事や設備の種類、注文者・元方事業者・作業場所管理者のいずれに当たるかなどにより、適用関係が異なります。
最も広い業種に関係するのは、発注条件への配慮
幅広い発注企業がまず確認したいのが、労働安全衛生法第3条第3項です。
同項は、仕事を他人に請け負わせる者に対し、施工方法、作業方法、工期、納期などについて、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮を求めています。
この規定は、もともと建設工事以外の注文者にも広く適用されるものでした。2025年改正は、建設工事以外にも適用される趣旨を明確にし、配慮の対象例として「作業方法」と「納期」を条文に加えたものです。
厚生労働省の通達では、安全衛生上問題となり得る条件の例として、次の内容が示されています。
- 無理な工期・納期を設定し、または変更すること
- 注文後に、当初予定していなかった条件を追加すること
- 作業場所、作業方法、使用する機械・設備・原材料、作業時間帯などを指定しながら、安全衛生上の留意事項を伝えないこと
- 必要な教育・研修や機械の検査などにかかる安全衛生経費を考慮しないこと
注文内容の変更によって、新たな教育・研修や機械の検査が必要になった場合には、注文者が費用を負担し、請負金に追加するなどの配慮が必要とも示されています。詳細は、厚生労働省の2025年5月14日付通達で確認できます。
「短い納期=直ちに違法」ではない
ここで注意したいのは、第3条第3項が「安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮する」という規定であることです。
例えば、IT開発やデザイン業務で短い納期を設定しただけで、直ちに同項違反になると一律に判断できるわけではありません。一方で、発注者が納期、作業時間帯、作業方法などを細かく指定し、その結果として過重な作業や健康障害の危険を高める場合には、安全衛生上の影響を踏まえた検討が必要です。
納期の根拠、業務量、仕様変更、追加作業、作業時間帯などを記録し、受注者と協議できる状態にしておくことが重要です。
現場で労働者と個人事業者が働く場合の措置が拡大
2026年4月1日から、建設業、造船業、製造業などで元方事業者等が講じる統括管理や作業間の連絡調整などの対象に、個人事業者等を含む「作業従事者」が加わりました。
さらに2027年4月1日からは、一定の危険・有害業務等が行われ、他の事業者の作業との接近・重なりによって労働災害のおそれがある場合に、業種を問わず一定の「作業場所管理事業者」に作業間の連絡調整などを求める制度が始まります。例えば、倉庫内で自社の従業員と外部の運送事業者が同時に荷役作業を行う場面などが想定されます。
個人事業者側にも、労働者と同じ場所で作業する場合、事業者等が実施する労働災害防止措置に協力する努力義務や、一定の安全上の指示・措置を守る義務があります。2026年3月30日付通達では、2026年4月施行分の対象者や適用場面が詳しく整理されています。2027年4月施行分は、2026年5月26日付通達で確認できます。
なお、フリーランス法上の「特定受託事業者」と、労働安全衛生法上の「個人事業者」は定義が完全には一致しません。労働安全衛生法上の個人事業者は、法人か個人かではなく、原則として「労働者を使用しているか」で判断されます。
2027年から個人事業者等の業務上災害に報告制度
2027年1月1日から、個人事業者等の業務上災害を把握するための報告制度が始まります。
例えば、個人事業者に仕事を請け負わせた注文者が同じ場所でその仕事を行い、労働者と個人事業者が同じ場所で作業している場合に、個人事業者が業務に起因して死亡または4日以上休業したことを把握したときは、一定の注文者に労働基準監督署への報告義務が生じます。注文者が該当しない場合でも、一定の要件を満たす「災害発生場所管理事業者等」が報告主体となることがあります。報告は原則として電子で行いますが、当分の間は書面による報告も認められます。
すべての発注者が、あらゆるフリーランスの事故について報告義務を負う制度ではありません。報告主体、同一場所性、災害と業務の関係、休業日数などの要件を確認する必要があります。また、過重な負荷による脳・心臓疾患や、強い心理的負荷による精神障害・自殺などは、注文者等による義務報告の対象外です。これらは、個人事業者本人等が労働基準監督署へ任意に直接報告できる別の仕組みが設けられています。
個人事業者等には、報告主体が労働基準監督署へ報告するために必要な情報のうち、把握している事項を伝える義務があります。ただし、死亡、意識不明、重い負傷、精神障害などにより情報提供が困難な場合の例外があります。また、報告義務を負うことだけで、直ちに災害防止上の責任を負うことになるわけではないと通達で明記されています。
制度の詳細は、厚生労働省の個人事業者等の業務上災害の報告に関する通達を確認してください。
フリーランス法との違い
フリーランス法と労働安全衛生法は、目的と規律する内容が異なります。
| 法律 | 主な目的・対象 |
|---|---|
| フリーランス法 | 業務委託取引の適正化と就業環境の整備。取引条件の明示、報酬支払、募集情報、ハラスメント対策などを規定 |
| 労働安全衛生法 | 作業に伴う危険や健康障害の防止。発注条件への配慮、作業場所の安全管理、教育、災害報告などを規定 |
なお、フリーランス法で発注者に課される義務は、発注者の要件や業務委託期間などによって異なります。
同じ業務委託について両方の法律が関係することがあります。契約条件と支払条件だけでなく、実際の作業場所、作業方法、時間帯、設備、危険情報、災害時の連絡方法まで確認することが大切です。
発注企業が確認したい7つのチェック項目
個人事業主・フリーランスへの発注がある企業は、次の項目を確認しておきましょう。

-
納期と業務量に無理がないか
短納期や突然の納期変更によって、安全・健康を損なう作業を招かないか確認します。 -
作業条件を事前に明示しているか
作業場所、方法、時間帯、使用設備・原材料などを指定する場合は、安全衛生上の注意事項も伝えます。 -
仕様変更と追加作業を記録しているか
変更内容、納期への影響、追加費用を協議し、合意内容を残します。 -
安全衛生に必要な費用を考慮しているか
教育・研修、機械等の検査に必要な費用を確認します。特に、注文内容の変更によって新たに必要になった教育・研修・検査等の費用は、注文者が負担し、請負金に追加するなどの配慮が必要です。作業内容に応じて保護具等の安全衛生対策が必要な場合は、その費用負担も明確にします。 -
同じ現場に複数の事業者が入るか
自社の労働者と委託先が混在する場合は、作業間の連絡調整や役割分担を確認します。 -
事故発生時の連絡経路を決めているか
誰が事故を把握し、誰が報告要件を判定し、どの情報を保存するかを決めておきます。 -
契約と実際の働き方が一致しているか
業務委託契約という名称だけで判断せず、指揮命令の程度などから実態が労働者に当たらないかも別途確認します。
まとめ
今回の労働安全衛生法改正では、個人事業者等を安全衛生上の保護対象・義務の主体として位置づけ、注文者や作業場所を管理する事業者の措置も拡充されました。
発注企業にとって重要なのは、単に契約書の条項を追加することではありません。納期や作業方法を決める段階から安全衛生への影響を考え、条件変更、追加費用、現場での連絡調整、災害時の報告フローまで管理することが求められます。
Sync Star 業務委託管理のように、業務委託の契約、発注、変更、作業報告、請求までを一元管理し、誰がいつ何を合意したかを記録できる状態にしておくことは、法令対応だけでなく、発注者と受注者の双方が安心して働ける環境づくりにもつながります。業務委託管理の全体像は「業務委託管理プラットフォームとは」、取引条件や支払期日などフリーランス法上の対応は「フリーランス新法 対応ガイド」もあわせてご覧ください。
※本記事は2026年9月21日時点の法令・公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別案件に対する法的助言ではありません。具体的な適用関係は、業務内容、契約関係、作業場所などによって異なります。必要に応じて所轄の労働基準監督署や専門家へご相談ください。
参考資料
- 労働安全衛生法
- フリーランス
- 個人事業者
- 安全衛生
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